取り上げるのもめんどくさくて、呆れたようにえのチャンを見ていた時。




『っえ!!?榎本先生っ!!!?』




微かに聞こえてきた女の子の声。

その瞬間、俺はパッと電話を取り上げた。




「か、佳世ちゃんっ!!!?」



『あ、堤、くん……?』




耳元から聞こえてくるのは聞き慣れた声。

なんで佳世ちゃんから電話がきたかはわからないけど、嬉しいのは確かで。

柄にもなく心臓が少し早いような気がする。




「え、どうしたの?」




できるだけ平然を装って、聞き返す。

隣ではえのチャンが聞き耳をたててるけど、そんなの気にできないくらい緊張してる俺。




『あ、えと、凌に番号教えてもらったから……えと……』



「凌ちゃんに?」



『そ、そう!!!』




何故か力強く答える佳世ちゃんに驚きながら、俺は首を捻った。


凌ちゃんに教えてもらったのはいいんだけど……


なんで佳世ちゃんが俺に電話してきたんだろう……?



今日、避けられてただけに謎は深まるばかりだ。