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「違うだろっ!」



「へー、じゃぁ何だよ?」




堤君と榎本先生が話している時、クイクイッと袖を引っ張られた。




「凌?」



「しーっ」




少し首を傾げると、凌は口元に人差し指をあてて黙ってるよう促す。

不思議に思いながらも黙ると、急に凌は私の手を引っ張って無理矢理立たされてしまった。




「……?」



「いくよ」




すんごく小さな声で言う凌に吊られて、ついつい私も忍び足で保健室を出てしまった。

かけ声は



“ぬき足 さし足 忍び足”



だ。

まあ、私の心の中だけだけど。



保健室から出て少し行くと、凌が深い安堵のため息をついた。




「……はぁっ……逃げ切れた」



「逃げてた、の?」




実際、よくわかんないままついてきてたんだよね…


疑問をぶつけると、凌は一瞬目を丸くして笑いながら答えてくれた。




「あははっ、そうそう。謙吾から逃げてたの。」



「堤君、から?」




なんで逃げる必要があるんだろ……