俺は辺りをキョロキョロ見渡すと、未だに逃げ腰の佳世ちゃんの方を見て口を開いた。




「凌ちゃんは?」




そう聞くと、佳世ちゃんは拍子抜けしたようにポカンとする。
そして、すぐにハッとしたように声を出した。




「なんか、したいことあるんだって」



「したい、こと……?」




佳世ちゃんもよくわかってないのか、少し苦笑いしながら頷いた。




「ふぅん……」




よくわかんないけど、とりあえず今、この瞬間は邪魔モノがいないということで。




「………」



「堤、くん?」




少し考えながら黙り込んだ俺をどう思ったのか、佳世ちゃんはそっと近づいてきて下からのぞき込んできた。


…………




「可愛すぎ」



「へ……きゃっ」




俺はボソッと呟くと、無防備にさらされていた佳世ちゃんの左手を強く握りしめた。


突然のことに佳世ちゃんはうろたえてるけど、そんなのは問題ない。




「ちょ、離してよーっ」



「えー、無理ー」



「無理じゃなーいっ」




そのまま教室へ行こうとすると、佳世ちゃんは強い力で抵抗してきた。


まるで、散歩を嫌がるうちの犬みたいだ……