「………は?」




俺の目に飛び込んできたのは、雨の中、立ち上がって空を見上げるひとりの女の子の姿。

あの容姿はどう見たって…




「凌、ちゃん…?」




思わず呟くように口に出した時、見られている事に気付いたのか、その顔がゆっくりとこちらを向く。

その瞬間、俺はシャッとカーテンを閉め、凌ちゃんから目をそらした。




「今の、なに……」



「さあな。まあ、わからねぇようじゃ、お前は最低な男ってことだ」



「はあっ?」



「少なくとも、謙吾なら走り出していくんじゃねぇか?」




再びタバコに火をつけながら、チラリと俺を見て先生は言う。

知ってるくせに。

俺が謙吾と比べられることが嫌いなのを知ってるくせに、わざと言っている。

湧き上がってくるのはムカムカとした感情と、モヤモヤとしたはっきりしない感情。




「……っ、…るかよ」



「あ?」



「知るかよ!俺は謙吾じゃない!俺は…俺のしたいようにするっ」




そんな俺を冷静に見る先生は、いつもとなんら変わりない。


でも、その視線から逃れたくて。

俺は鞄をひったくるように持ち、勢いよくドアを開いた。