え―…と、謙吾です。

俺がジュースを持ってきて約10分。

佳世ちゃんが言葉を発してくれません。

そして、マズいことに佳世ちゃんの緊張が俺に伝染しはじめました……




「………」



「………トイレ、借りていい?」



「あ、うん。そこの突き当たりにあるから」



「ありがと」




はい、会話終了。

さっきから佳世ちゃんが口を開いても、お互いに緊張しまくりでなかなか会話にならない。

いや、今の話は長引かせるものではないだろうけど。

佳世ちゃんのポニーテールが扉の向こうに消えるのを見て、俺は小さくため息をついた。




「つか、こんなの、俺じゃない…」




女の子がひとり家にいるだけなのに緊張してるって何だよ。

抱いた女は数知れず

泣かせた女も数知れず

3ヶ月前までの俺とはえらい違いだ。




「思ってたよりハマっちゃってる………」




額に手の甲を当てながら上を仰ぎ、“あ゛───”と声をあげながら再びため息をついた。