いつか、さくらを片手に君に逢いに行くその日まで…

冷え切った体のまま、とぼとぼ歩いて行き着いた場所は、グランドピアノの置いてある家の中で1番大きな部屋だった。

私は静かに部屋に入る。賞状も、楽譜も何もかもがホコリの雪を被っているのだ。
少し薄気味悪かったが、真ん中に置いてあるピアノの椅子をゆっくり引き、座る。

無意識にフタを開け、音をポーンと鳴らすのだ。

頭は覚えてなくても体は覚えている。それだけが、分かった。

私は中学生の時賞をとった仔犬のワルツを弾く。

タンタンタンタン…

笑顔が私からこぼれた…涙と一緒に。
あれ?なんで泣いているのだろう。理由だけは分からなかった。