私が断ろうとしていることが分かったのか、翠咲くんは少しかがんで私の顔を除きこんだ。
「ダメ、かな?」
眉毛をハの字にし、子犬のような瞳で上目遣いをしてきた。
あ、あざとい…。
確信犯だよね、これ。
たださえお顔が整っているのに、こんな顔されたら女どころか男ですらなんでも言うこと聞いちゃうよ。
「え、えっと、私はその……」
「オムライス嫌い?」
「いや、好きだけど…」
「じゃあ決まりっ!土曜日、駅に11時集合ね」
えぇ~…。
なんか間髪入れる暇もなく事が勝手に進んでいってしまった…。
当の本人はというと、デミグラスソースの乗ったオムラスをそそくさと受け取り、もう席についてしまっている。
はぁ、断りきれなかった私も悪い。
烙さんのところには夕方行こう。
「のんちゃん遅かったねぇ?」
席に戻ると待っていてくれたらしい桃優が心配そうにこちらを見ていた。
「あー、うん。ごめん、席ちょっと迷っちゃって」
あはは、とごまかすものの、桃優の左隣にいる輝望くんの視線が痛くて、視線をオムライスへと向ける。
「みんな、待っててくれたんだねっ、ありがとう。食べよっか」
突っ込まれる前に早く話題を変えたかった。
輝望くんは相当お腹がすいていたのか、私への視線は目の前の牛丼へと変わっていた。
ふぅ。
よかった。
変に詮索されても面倒だし、輝望くんには何を言ってもバレる気がしてた。
バレたらついてくるなんて言いかねないからね。
