「輝望くん、私、目立つの好きじゃないから、手、話してくれないかな?」


あくまでも優しい口調で、にっこりと、でもさっさとどけろよって意味を込めて伝える。



「えー。ひめ、僕が何もしなくても目立ってるじゃーん」



何言ってるの。


理解できないうえに、解放してくれないことから自然の眉間に皺が寄っていた。



「ほらほらー。笑顔くずれてるってばぁ」



抱き着いたまま耳元でささやかれるものだから、思わずビクッとなってしまった。


なんだか、耳はざわざわするし、恥ずかしいから本当にからかうのはやめてほしい。


「えー、なにその反応。そそられるね?」



なにかおもしろいおもちゃでも見つけたような怪しい笑みを浮かべた輝望は、
私の反応がよほどおもしろかったのか、

その綺麗な形をした唇を私の耳へと近づけていた。




「おい、いち。調子乗んな」



後ろから低い声がしたかと思うと、輝望くんが私から離れた。


振り返ると、輝望を目で殺す勢いで睨んでいる透理と、輝望を軽々しく持ち上げている、というか、捕まえている翠咲が立っていた。



「ごめんね、妃夢乃さん。壱星が迷惑かけて」


「あ、ううん。ちょっとびっくりしちゃったけど大丈夫だよ」


慌てて首を振り、会話をなるべく早く終わらせれるようにする。



本当はものすごく迷惑してたし、引き剥がしてくれて助かったのだけど。




それよりお願いだから、昼休みのこんな生徒が多い食堂にまで絡んでこないで欲しいという思いの方が強い。



イケメン転校生が全員揃ったせいで、食堂はもはやプチパニック状態だ。