この人になら心を開けると思った。
だからか、今日の朝は少しだけソワソワしていた。
いつものようにドアを開ければもうすでに陽名蒼空はいた。
「おはよ、妃夢乃」
綻ぶような優しい笑顔を私に向ける。
ドキっ、と心臓が高鳴った。
「なぁ、希愛って、呼んでもいい?」
この学校に来てから誰にも呼ばれなかった名前。
パパとママの名前からとった私の名前。
この人にならいいと思った。
「わり、調子乗った」
「…いいよ」
「えっ?」
「陽名なら、いいよ」
私が初めて陽名に喋った瞬間だった。
呼んでほしい、と素直に思った。