会話を強制終了させ、1限の準備を始めた。


「妃夢乃さん。」


「どうしたの?翠咲くん」


「俺、まだ教科書持ってないんだ。見せてもらってもいい?」


困ったように眉毛を八の字にして、私を見つめてきたその瞳はまるで仔犬のようだった。


うっ。
その瞳はずるくないか?


「うん。いいよ、私でよかったら」


「まじ!?ありがとっ!」


ニカッと爽やかな眩しい笑顔を見せた。


かっこいい、と思うより前に似てる、と思った。


私の大好きなあの人に。


いるはずのないあの人。