「もう、私を待たないでほしいの。」
「どういう意味?」
今日まで何度も心の中で練習してきた言葉。
最後までちゃんと言わないとならない。

「海璃とは結婚できないし。これからも私は海璃とは結婚できません。だから、別れてほしい。」
「どうして?」
海璃の声が切ない。

辛そうにも聞こえるその声に、心が痛む。

「海璃には幸せになってほしいから。家庭を大切にしてくれるかわいい奥さんと、かわいい子供にも恵まれて」
その時、海璃は私の言葉を遮った。

「俺の幸せは京香にあるって言ったら?」
「・・・」
海璃の大きな愛に、私は何度も瞬きをして潤んだ瞳から涙が流れないようにした。