俺たちは重大な決断をする局面に立っていた。

「現状、進藤さんの場合体力も回復されていますし、病気も根治とまではいきませんがほぼ治っている状況です。現実問題として、妊娠も出産もちゃんとケアをすれば可能ではあります。」

医師からの説明に、食い入るように前のめりになって真剣に話を聞いている京香。
その表情が久しぶりに切羽詰まっていることを感じる。

「でも」
京香は医師からの言葉の続きがあることをはじめから知っていたかのように、少し悲し気にもとれる表情になりながら、頷いた。

「妊娠や出産は健康な体の女性にとっても、かなり負担があることです。健康でもさまざまなトラブルはつきものですし、かなりの制限もあります。無事に出産できるかどうかは誰にも分りません。そのくらい、大きなことです。」
「・・・はい」
この病院に来ることも、京香にはかなりの覚悟がいったはずだ。
それでも、京香はずっとずっとこの病院に来ることを望んでいた。