かかとの鳴るヒールをかつかつ音を鳴らしていつも必死に前を歩くあいつが、もしも転ぶようなことがあったら、俺はいつだって支えてやれるように、助けられるように、いつの間にか俺はあいつの後ろを金魚の糞みたいに歩くようになった。

それでいい。

ちっさい体で、無理して、全力で次の一歩を踏み出すあいつ。

そんなあいつを守りたいと思った俺。
自分以外の誰かをこんな風に思うのははじめてだ。

俺がそんな風に思える相手は、後にも先にも京香だけだと思う。


俺は冷蔵庫の前で缶の中身を半分に減らしてから、ソファに戻った。
いちをジャケットがしわにならないように、背もたれにジャケットをよけて、ほかにもソファにのっていたものを机にのせて、俺はソファに座った。

ソファにもたれて天井を見上げて、少し目を閉じる。