海璃

私はずっとあなたよりも前を、先を歩こうと必死だった日々をあの時、思い出したの。
そしてわかった。

あなたがいつも私よりも後をゆっくりと歩いていた意味を。
なのに私よりも仕事ができたのは、私よりもたくさんのものを見て、いろいろなことを知って考えていたからだって。

私は自分とは真逆のあなたになぜ惹かれるのか自分でもわからなかった。

でもあの時わかった。

海璃は私にもっていないものをたくさん持っていて、海璃は私の知らない世界や景色をたくさん見せてくれた。ただ前を見て突っ走る私には見逃していた景色がたくさんあった。見逃してしまったものがたくさんあった。そんな私が見逃している世界を海璃が気づかせてくれたの。

私にないものを海璃は持っている。それがなんなのかあの日わかった。

そしてあの日、海璃のスピードで一緒に前に進めた時、ここからの景色をもっとずっと見ていたいと心から神様に願った。
だってもっと一緒にいたいもん。一緒に歩きたいもん。
今まで見逃してしまったものをちゃんと見たいと心から思えた。

ほかの誰かとじゃない。一人でじゃない。
海璃と一緒にみたいって思った。海璃とじゃなきゃ嫌だって思った。

海璃がいつも私に言ってくれてた『あきらめんな』って言葉。
私があきらめたくないのはただ一つ。
海璃と一緒にいることだって、やっと私は気づいたの。
ほかには何もいらない。

ただ、海璃と一緒にいたいって心から願ってる。