「俺は十分じゃない。足りない。」
「海璃・・・聞いてたでしょ?先生の話。」
「聞いてたよ?」
「私、死んじゃうんだよ?」
海璃の気持ちが私の言葉で揺るがない状況につい私が口にしてしまった言葉にも、海璃は動揺せずに、むしろそう私が言うことが分かっていたかのように、穏やかな表情で優しい視線を私に向けてくる。

「誰でも、いつかはな」
「私は・・・」
どんどんと涙で顔がぐちゃぐちゃになる私。
「俺はあきらめないって言っただろ?簡単にあきらめない。」
きっぱりという海璃。
「俺は京香との未来をあきらめない。未来をあきらめないんだよ。」
「海璃・・・」
私の両腕をつかみながら、海璃がまっすぐで真剣なまなざしを私に送ってくる。
その視線からは私は逃れられない。

「指輪、買おう。ちゃんと約束、守るから。」