「約束してほしいの」
「なに?」
海璃は私を抱きしめたままで話を聞いてくれている。

「私のこと、ちゃんと忘れてね」
「・・・」
海璃は返事をせず体を私からはなそうとする。
私は海璃の背中に回している手に力を込めて、離れられないようにした。

「お願い。このままできいてほしい」
「・・・」
「海璃。お願い。」
ここで最後なんて言葉を出したらきっと海璃に叱られる。

少しの沈黙の後に海璃は「わかった」と低い声を絞り出すように言葉にして、私の体を抱く手に力を込めた。

「ありがとう」
心からの感謝を一緒に、目を閉じたまま私は言葉を続ける。