「勝手にお前のお母さんに挨拶してきた。んで、お前のお父さんにも挨拶してきた。勝手にな。」
いたずらをした子供のように笑い自分の頭をかく海璃。
「やっぱ、こういう時はスーツだろ」
「・・・」
海璃は記憶力がいい。

私よりもかなり。記念日だって海璃は忘れたことがない。

私の言葉もいつも聴いていないようでしっかりと聞いていて、覚えてくれている。

私の実家の話も、両親の話も、秘密の場所のことも全部ちゃんと聞いて覚えていてくれたのだと思うと余計に涙が止まらなくなる。

「お母さんがこの場所教えてくれたんだ」
「え?」
意外な言葉に私は海璃を見る。

もう海璃は私のすぐ目の前に立っていて、手を伸ばせば触れられる距離にいた。