「ねぇ。祐一さん。私 嘘ついていたの。」

車に乗ると すぐに 瑞希は言った。


唇を離したあと しばらく 瑞希を 抱き締めて。

俺達は ゆっくり 車に戻った。


「んっ?なあに?」

俺は 瑞希の告白を 予想していたけど。

「あのね…」

「このまま 聞く?走ってた方が いい?」

言い難そうな瑞希に 助け船を出す。


「このまま聞いて。あのね。私 恋愛のレッスンなんて できないの。だって。私 本当は 恋人なんて いなかったの。1人も。」

純粋な少女の 勇気ある告白に 俺は 胸が熱くなり

そのまま 瑞希を 抱き締めてしまった。


「ありがとう 瑞希。嬉しいよ。」

瑞希を 胸に抱いて 言うと

瑞希は 驚いたように 顔を上げる。


「本当に?私 何にも 知らないのに。今まで 祐一さんを 騙していたんだよ。いいの?」

「いいよ。騙されていても 楽しかったし。それに 瑞希を好きな気持ちは 変わらないから。」

「私を 好き?」

「うん。大好き。もう 離したくないほど。」


瑞希は じっと俺の目を 見つめる。

臆病な少女は 慎重で 疑り深いから。


「瑞希は?俺のこと どう思っているの?」

「好き…」

瑞希は 小さな声で言って 俺の胸に 顔を伏せた。


「瑞希。可愛い…もう一度 キスしてもいい?」

微かに頷く 瑞希の顔を上げて 俺は キスをした。


柔らかな 瑞希の唇が 愛おしくて。

余裕で 始めたはずの 自分に 狼狽して。


恋をしたら 大人だって 余裕なんかない。


そんなことを 実感するくらい 俺は瑞希に 恋していた。