瑞希との デートを 重ねる間にも

俺は 大友建設に 顔を出す用事があって。

事務所で 社長の顔を見ることが

少し きまり悪かった。


「進藤君。顔が 明るくなったわね。」

この社長を 欺くことなんて できるのか?

「はい。社長に 聞いていただいて。だいぶ 気持ちの整理が できました。」

「そう。よかったわ。少しは 私も 約に立てたのね。」

「僕 あのこと話したの 社長だけですから。少しどころか 相当です。」


あの時 瑞希と 出会わせてくれたから…


瑞希は 師匠の役目を 忘れるほど

俺達は 普通の恋人に なっていた。


『祐一さん。今日 ママに会ったでしょう。』

『うん。俺 緊張しちゃって。瑞希のママ 勘が鋭いから。』

『ママ 私に カマかけてきたよ。進藤君も すっかり明るくなって。恋人でも できたのかなって。』

『嘘。まさか 瑞希だって 気付いている?』

『それは 大丈夫だと思うけど。私 演技上手いから。』

『瑞希。もし ママにバレたら 叱られる?』

『うーん。微妙。ママなら わかってくれるような 気もするけど。自分の娘だと 冷静じゃなくなるのかなって。』


普通の 恋人同士の会話なのに。

瑞希は それを 隠そうともしない。


瑞希と 初めてデートした日から

まもなく 1か月が経つ。

瑞希の夏休みも あと少しになっていた。