意外な所で 思いがけずに 拾ってしまった恋。

忘れていた ときめきに 俺は 翻弄されていた。


誰かを 好きとか 愛しいとか。

本当に 8年振りの感情だったから。


「ラインとか 電話って どうすればいいの?」

わざと 瑞希ちゃんに聞くと

「進藤さんは 仕事しているから。しょっちゅうは 無理でしょう?せめて 夜は 連絡しいた方が いいよ。」

瑞希ちゃんに 言われるまでもなく。

俺は 自分が 瑞希ちゃんと話したくて。


朝は 仕事の前に ラインをして。

その日の 予定を 伝えて。


仕事が 終わると 瑞希ちゃんに 電話をした。


「そろそろ 掛かってくるかなって 思ってた。」

俺の電話を 待っている言葉が 嬉しくて。


「ねぇ。土曜日のデートは どこがいい?」

「そうだなぁ。外は 暑いから。映画とかは?」

「うん。いいね。瑞希ちゃん 見たい映画 ある?」

「涼しくなるなら ホラーだよね?」

「えー。俺 ホラーって 苦手。」

「そうなの?進藤さん 怖がりなの?」



「あっ。そうだ。恋人同士なのに  ” 進藤さん ” って 呼び方 おかしくない?みんな どんな風に 呼び合うの?」

「そうだね。名前で呼ぶのが 普通だけど。2人だけの 呼び方 決める人も多いよ。」

「俺 祐一っていう名前なんだけど。瑞希ちゃんなら なんて呼ぶ?」

「うーん。祐ちゃんとか。祐君とか。でも 進藤さん 大人だから。祐一さんがいいかな。」


「じゃ 瑞希ちゃんは?なんて 呼ばれたい?」

「私?友達は ミィって呼ぶけど。瑞希って。呼び捨てが いいかな。」

「ちょっと 練習して 呼んでみようか。」

「いいよ。祐一さん。」

「なあに。瑞希。」

「ちょっと 照れるね。」

「うん。少し 恥ずかしいね。でも 恋人っぽくなったね。これで ホラー 頑張るよ。」


繊細で 壊れやすい ガラス細工を 扱うように。

俺は 少しづつ 瑞希の心に 入っていった。