「進藤君には 麻里絵ちゃんを 引きずる権利 ないから。進藤君が 引きずっている間は どこかで 麻里絵ちゃんも 苦しみ続けているわ。そういうのって 恐ろしいくらい リンクするの。」
社長に言われ 俺は ハッとする。
もし 麻里絵が まだどこかで 苦しんでいたら。
俺には どうすることも できないけど。
でも それを願っている 俺もいる。
「俺。麻里絵には 幸せになっていてほしいって 思っていたけど。でも 正直言って まだ 俺の事 思っていてくれたらっていう気持ちも 捨て切れてなかった。」
「そうでしょう?進藤君が 苦しんだことは 嘘じゃないと思うけど。 ” 麻里絵 俺は こんなに苦しんでいるんだよ ” って。それは ただの自己満足。苦しい自分が 好きなだけ。」
「社長 キツいなぁ。でも そうかもしれません。俺 あの時 ボロボロの自分を 麻里絵に 見られたくなかった。本当に 失いたくないなら そんなこと 言っている場合じゃなかったのに。」
「そうよ。必死で生きるって すごく みっともないの。振り払われても 土下座して。何度でも 縋りつくほどには 麻里絵ちゃんを 好きじゃなかったってこと。
汚くて みじめで。カッコ悪い自分も 全部 見せられるような人に きっと 出会えるわよ。そのうち。」
社長の言葉は 妙な重みがあって。
辛辣だけど どこか 温かくて。
「今日 ここで話したことは コーヒーと一緒に トイレに流しちゃって。これからは 前を向きなさいよ。まだ若いんだからさ 進藤君。」
「ありがとうございます。ちょっと 表現が 汚いけど。」
俺は 声を出して 笑ってしまった。



