俺は 完全に 麻里絵を失った。

1度だけでなく 2度も 千佳を抱いた。

交わった後の 喪失感に 打ちのめされて。


無気力の俺は 麻里絵のことさえ 考えられなかった。


「祐一君。ちょっと 買い物に行ってくるね。」

千佳は いそいそと シャワーを浴びて

1人で 出かけていった。


ベッドから でることもできず。

ぼんやりしたまま 俺は 微睡んでいた。


料理の匂いと 微かな物音に 目覚めると

千佳が 鼻歌混じりで 料理をしている。

千佳の 勝手な行動を 咎める気もなく。


麻里絵より 肉付きのいい 千佳の背中を

俺は ぼんやりと 見つめ続けた。


「祐一君。ご飯 できたよ。起きて。」

千佳に 呼ばれたけど 起きる気もなく。

そもそも 食欲なんて 全くないし。


「もう。冷めちゃうから。早く。」

俺の手を 引っ張る 千佳を 払い除け。

立ち上がった俺は 本棚から ウイスキーを取り出す。


東京に出る時 父が こっそり 持たせてくれた物。

飲むことが ないまま 棚に 飾っておいたけど。


俺は ウイスキーを 一気に煽る。

喉が 焼けるような痛みに むせながら

ストレートのウイスキーを 何杯も飲む。


目が回り始めて 頭が ぼんやりして。

現実逃避に 成功した俺は 

そのまま 千佳を 押し倒して 床の上で 抱いた。