「祐一君 麻里絵のこと 好きですよね。私 麻里絵から 色々 話し 聞いてるから。祐一君の気持ち わかるから。黙っているの 辛くて。」

俺は ビールを のどに流して 千佳の続きを待つ。

「麻里絵 田舎に 許婚がいるんです。その人と 結婚することは 小さい頃から 決まっていたことで。だから どれだけ 祐一君が 麻里絵を好きでも 麻里絵にとっては 遊びなんです。」

「何言ってるの?そんな人 いる訳ないじゃん。」

俺は ムッとして 千佳を見る。

千佳は ジョッキを 半分くらい 一気に空けて。


「本当です。今だって 麻里絵 その人に 会うために 実家に帰っているんだから。麻里絵の家って 田舎でも 有名な旧家で。結婚相手とか そういうのも 親が決めるって。」

千佳は 顔が真っ赤になっていた。

興奮しているのか ビールのせいなのか。


「もし それが 本当のことだとしても。それって 俺とまりのことでしょ?千佳ちゃんに 何か言われる必要 ないよね?」

俺が ビールを飲むと 千佳も ジョッキを取る。


「すいません。もう一杯。」

千佳は ジョッキを上げて 店員さんに言う。


「でも私 見てられなくて。麻里絵 いつも 祐一君のこと 自慢するから。何も 知らない 祐一君が 可哀そうで。」


「別に 俺を見てるわけじゃないんだから。見てられないって おかしいでしょう。」

千佳の言葉の 小さな矛盾を 咎めるけど。

「だから。麻里絵を 見てられないの。ひどすぎるでしょう。麻里絵 祐一君のことは 学生時代の 思い出って。しっかり割り切っているんですよ。そんな事 許せない。」


千佳は またビールを煽る。


酔ってきた 千佳の目に

俺は 嫌な予感が よぎった。