「上司との不倫でその上司に裏切られて弱っていたママがもし、タチの悪い男につかまっていたら、今、ママはパパの隣にはいなかっただろう。」

「えっ?」

「日詠先生が、純粋に伶菜さんのことを想っていることが澪に伝わったから、澪もちゃんと恋をしなきゃいけない・・・そう思ってくれたんじゃないかな?」



耳を手で塞いでいたはずの藤崎さんは芽衣さんの頭を優しく撫でながら、彼女にそう語りかけた。



この人が澪さんの旦那さんで良かった
そう思わずにはいられない

ちゃんと恋しなきゃいけない
そう思った澪さんをちゃんと受け止めてくれたんだから

澪さんを抱いた翌朝
ホテルのドアの前で俺と向き合った彼の、まっすぐな瞳
この人なら自分が傷つけた澪さんを支えてくれる人だろう
そう思った俺の目に間違いはなかった




「ちゃんと恋しなきゃ・・・と思ったんだね。」

「ああ・・・だから俺も、あの夜・・・日詠先生とママが過ごした夜を否定はしない。ママがパパに甘えるきっかけになった夜だから。だけど、芽衣はややこしい恋愛はしないで、日詠先生のおっしゃる通り、お互いに大切だと思う人とエッチしろ。世の中、日詠先生みたいに想い悩んでエッチする人ばかりじゃなく、ただ、性欲を発散させるために女性を食い荒らすようにエッチする悪い男もいるからな。」


そして、娘と性の話をちゃんとできる父親
同じ娘を持つ父親として、この人も俺のお手本になる人
そうも思えた


「ひゃ~パパ・・エッチしろって・・・」

「言っておくけど、パパはちゃんと段階を踏んでママとエッチしたからな。まずは手を繋ぐからだ。2回目のデートでハグだろ?ほんでもって、3回目で唇がちゅって一瞬重なるだけのキスだ。大切だからこそ、先走ったらいけないぞ!だから、その日はまっすぐに別々に家に帰って、それで4回目のデートでやっとディープキスを」

「きゃ~パパ、清純派!!!!やるぅ~。」



でも、俺はここまで赤裸々に陽菜や祐希に説明できるかは
ちょっと自信はないけどな


「ちょっと、こんなところでなんてこと娘に説明してんのよ!!!!」


保健講話の追加講義をするはずだった診察室が
親子コントが繰り広げられる場所になりかけたところに
伶菜を追いかけていただろう澪さんが慌てて戻って来た。