澪さん

俺に大切なことを教えてくれて
俺の生き方を変えてくれた人

今の俺があるのも
この人から教えられた影響が少なからずあると思う


他人から見たらちょっと歪んだ関係かもしれないけれど
俺は彼女との過去は忘れてはいけない
そう思っている

まだオトナになりきれていなかった俺の背中を押してくれた人だから




「・・・新聞、見ました。安心した。あなたが欲しかったモノ・・モノじゃないか・・欲しかった人を掴むことができたことを知ったから。」



自分の知らない本当の自分の家族関係を知った日
それは自分の大切な唯一の繋がりを失った日
そんな絶望感に襲われていた中、俺は澪さんに出逢った


最初出逢った時
彼女は自分と似たような空気の中にいるような気がした

それでも、この人は、俺に何かを教えてくれる
なぜかそんな気もしていた

だから俺の手を引く彼女について行った


素性も知らないのに
この人なら俺の何かを変えてくれるかもしれない
そうも思ったから



『・・・覚えて下さっていたんですね。』

「当たり前よ。いろいろな意味で、あなたみたいな人、初めてだったから。」




初めて逢った時と変わらない
年上の、余裕のある女性

でも、1つだけ変わってみえるところもある

何かを失ったようなあの時の彼女とは違う、幸せそうな横顔だ



『僕もです。』

「幸せそうで、もっと安心した。」

『・・・あなたも』



この仕事に従事していたからこその再会かもしれない
この仕事を続けていて良かった

心の中でそう呟いた中だった。


「ママ~、日詠先生と知り合い?」


娘さんが澪さんと俺の顔を交互に見比べながら澪さんにそう尋ねた。