「伶菜さん、起きて下さい!」

『へっ?』

「今、ロールプレイングの実習中です。」

『あっ、いけない。でも、なんか頭、痛い。』

「もう少しで実習、終わるので、あと少し頑張って下さい。終わったら、保育園で祐希くんを拾って家まで送りますから。」



風邪気味だったけれど、どうしても休めないロールプレイング実習に出席した私。
座っているのがせいいっぱいで、熱が上がってきたのか、ついウトウトしてしまった時に達也くんは准教授にみつからないように起こしてくれた。

そのおかげで、なんとか実習を終え、彼のお言葉に甘えて、彼のクルマで自宅まで送ってもらうことにした。



『実習で疲れているのに、自宅まで送ってくれてありがとう。』

「家の中まで送ります。熱、上がっているみたいだし。」

『大丈夫、ありがと。祐希、達也くんにありがと言ってね。』


ちゃんとありがとうを言った祐希の手を引いて、達也くんのクルマから降りて、アパートの自分の部屋のほうに歩き出そうとした時に視界が揺れた。


「やっぱり部屋まで送ります。祐希くん、部屋の場所教えて。」

『・・・ごめん・・・甘えて。』

「こういう時だからこそ甘えていいんですよ。」

『あり・・がと・・・』


歩けない私の体をひょいと抱えて、先導する祐希の後をついて移動してくれる達也くん。
達也くんのさりげない言葉が私を甘やかす。