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達也くんは私が臨床心理士になるために進学した大学院の同窓生
苦楽と共にした友人のひとり
達也くんは私と同じく社会人を経て入学した学生だった
彼は中学校で理科教員として従事していたけれど、教員として従事していく中で、学校内でのいじめや人間関係を目の当たりにしたことでスクールカウンセリングに興味を持ち始め、臨床心理の道を志したという人
入学時、私は当時27才で達也くんは25才だった



「伶菜さん、今日の飲み会、参加されます?」

『ごめん。私、子供を保育園に迎えに行かなきゃいけないから・・・』

「えっ?子供?お子さんいるんですか?」

『うん。ひとりだけね。』

「旦那さんは・・・」



私の左手薬指をじっと見つめながらそう問いかけた飲み会幹事の達也くん。
もちろんその薬指に指輪なんて嵌っていない
私は結婚していないシングルマザーだから

子供である祐希の実の父親には裏切られた
そんな私にも結婚を約束していた人はいたけれど
自分の夢を叶えたくて、その人の手を自ら離した

『いない。』

手を離してから気がついた
その人のことがやっぱりスキなんだって



その後、達也くんは、臨床実習でお給料が貰える実習先を教えてくれたり、カンファレンスの授業で下校が遅くなって、祐希を保育園に迎えに行く時に、夜道は危ないからと保育園や自宅まで付添ってくれたりするなど、なにかと世話を焼いてくれる友人のひとりとなった