この男が振り返りながら俺のほうに近付こうとしているのを除けようとした瞬間、
自分のほうに強引に向かってきたこの男の右腕。
「・・・・・美味しいでしょ?」
「純平くんのは絶対美味しいよ♪」
満足げなこの男の問いかけと
伶菜の美味しいのダメ押しを耳にしながら
俺は”やめろ”と訴えかけた際に大きく開けた口の中に放り込まれたモノをもぐもぐと咀嚼した。
あまい
確かにふわふわしている
味は濃厚
言葉通りの伊達巻だ
「ナオフミさん、そうでしょ?美味しいでしょ。」
『確かに美味いな。』
「純平くん、美味しいって!」
「・・・・・ようやく自信がでてきました。伊達巻!」
さっきまでの俺の恥ずかしい勘違いは露知らずらしいこのふたりは
女子高生の昼休みみたいにはしゃいでいる。
純平という名の男が座っている横には大きな弁当箱が置かれている。
そこにも美味そうな伊達巻がまだたくさん入っている。
なんなんだ、この男
伶菜と仲良く弁当を食うところか
どうやら伊達巻を彼女にご馳走しているこの男
しかも院内でYシャツの男って、
白衣を脱いだ医者・・・・?
でも俺はこんなほんわかした男を医局内で見かけたことないぞ
じゃあ、事務職員か?
事務職員まで知らないな・・・
「ナオフミさん、多分、初めまして・・だよね。」
余程俺が険しい顔をしていたのか
伶菜がこの男と俺を不思議そうな顔で交互に見つめながらそう言った。



