「いってくるね」

わたしは健人に向かって笑顔でそういった。

それがわたしにできる、健人への精一杯の恩返しだと思って。



「さんきゅ」

そういった桐生くんはわたしの手をとった。

優しく、壊れ物を扱うように。

そしていまだに群がる女子たちの間をするすると抜けてそのまま屋上へとやってきた。


悲鳴が近くで聞こえてうるさすぎて、ちょっとやばかったな。




「愛鳥、ごめん」

「・・・え?」

はじめて。はじめて名前を呼ばれた。

今までずっとお前だったから。

ちょっと動揺。

それに、ごめんってさっきも言ってたけど・・・。