「俺は別にかまわない」

「なにが?」

「お前がこの家を継いでくれなくてもだ」

「・・は?」

「もともとお前は背負わなくてよかったものだ。代わりはほかにも探せばいる」

「そんなの、じいちゃんが納得しねえだろ」


いまさらそれいう?

今まで社長になるんだって思っていろいろ学んできて、厳しくされてきて。

それにじいちゃんが罪を犯してまで俺はこの家にきたのに?

いまさらそんなこといわれたら、余計俺はこの家にいる意味がなくなっちゃうじゃんか。



「親父には、俺がいう。お前が本当に好きで社長になりたいとか、俺の跡を継ぎたいとか思ってくれてるならそれは嬉しい。でも違うなら。この会社のためだと、自分の運命だと思ってるなら、俺は反対だ」


たしかに思ってる。

これは運命だって。

生まれた瞬間から、すり替えられた瞬間から、俺はこの運命をたどってきた。

普通の家庭ではなく、金持ちの世界へとやってきた。

自分から望んだわけでもなく、ただ決められた道を進んできた。