わたしの手をとるとき優しく握りしめた桐生くん。

わたしに傘をさしだしてくれた桐生くん。

泣きたいときは思いっきり泣けばいい。そういってくれた桐生くん。

俺はお前がうざい、それは変わらない。そういった桐生くん。

真実を知ったとき、それでもお前は笑っていられるかな。そういった桐生くん。


どれも、きっと、本当の彼。

優しいときも、わたしを突き放すときも。


桐生くんの心の奥を知りたくなった。

深い闇に飲み込まれている桐生くんを、助けてあげたくなった。





「ねえ、わたしのお母さん、どんな人だった?」

できることなら、会ってみたかったな。

わたしの実のお母さんに。

桐生くんさえ知らない、その人に。



「飛鳥はね、とても優しくて真っすぐで。明るくて、前向き。体が弱いなんてそんなの感じさせないくらい、強い子だった」

「飛鳥さん、っていうんだね」

「愛鳥。あなたの名前はね、飛鳥がつけたのよ」

「え?」


それっておかしくない?

だってわたしを産んだと同時に死んじゃったんだから。そんなこと。