「宮下から連絡がきたときには、驚いたよ。恥ずかしいことに、俺は全く気付かなかった。自分の子供が男の子になっているということに。それはお前の知っての通り、家にあまりいなかったのもある。だから、宮下から連絡がきたときは、驚いて言葉もでなかった」
今思えばほんとうに少しだけ、かすかに記憶がある。
男の子みたいだね。
そういっていたお手伝いさんの言葉や、近所の人の言葉が。
まだ小さかったから、その意味なんて知らないままだったけれど。
「親父に問い詰めたらすぐに白状したよ。病院側も認めた。ただ、事件にはしないでほしいと頼んだ。それは宮下夫婦とも話し合って決めたことだ」
「・・・どうして?」
「公表したらマスコミが動く。そしたらお前たちが、子供たちがそういう目でみられることになる。いつまでだって言われ続け、追われるかもしれない。そんなのは嫌だと宮下がいったんだ。俺も同意見だった。それは会社の体裁を守るためじゃない。海を、本当の娘を、守るためだ」
だから、公にはなっていないということなのか。
だって知らない。
そんな大きな事件があったらたしかに普通は新聞にも取り上げられ、世界的にもニュースになっているだろうから。



