「卒業おめでとう、さきちゃん」


私の愛しの王子様が出迎えてくれた。


私が好きで好きでたまらない先輩がそこにいる。


「ありがとうございます、先輩」


その姿が見たかった。


その声が聴きたかった。


私は、先輩に近づき、ほほに触れようと手を伸ばす。


すると、先輩の姿を形作っていた桜の花びらがひらひらと舞い、風に飛ばされていった。


先輩は風と共に消えてしまった。いや、先輩は最初からいなかった。


そう錯覚しただけ。


「いるわけないか・・・」


私は、深いため息をつきながら、その場を去る。


風に飛ばされていった桜は、そのまま遠く遠くへと運ばれていく。


どこまでも、どこまでも遠くへ。


そしてそれは、やがて誰かが拾い上げることもあるだろう。


例えば、私より一つ年上の憧れの人が・・・。