「さきちゃん、待って!」


私の肩に、誰かが手を置いた。誰かが息を切らしながら、私を呼び止めた。・・・え?


落ち着きのある少し低めの声。この声が誰かなんて振り向かなくてもわかる。


だってそれは、この一年間、私の耳に焼き付いている声だったから。大好きな先輩の声だったから。


だから、信じられない。この状況が信じられない。


「もしかして、俺に用がある?」


「は、はい」


先輩が一人でこの時間まで残っていることを少し不思議に思ったが、今はそれどころではなかった。


先輩のきれいな顔が私をまっすぐに見つめている。どんどん速くなる心臓の音が先輩に聞こえてしまいそう。


ああ、これは、もう、言うしかない。この瞬間のために私は頑張ってきたんだから。


私は、先輩の目をまっすぐに見つめて、自分の想いを伝えた。