高校二年の春。


学校の敷地内には、たくさんの桜が自分自身をピンク色に染め上げ、所狭しと並んでいる。


私はその桜のトンネルを潜り抜け、昇降口へと向かう。上履きに履き替え、階段を上り、まだ通いなれていない二年生の教室へと歩いていく。途中ですれ違う生徒は一人もいない。


「そりゃそうだよね、まだ一時間前だもん・・・」


私はなぜか新学期になると、そわそわして学校に早く来てしまう癖がある。特に用事もないのに。


きっと教室にはまだ誰もいないだろう。静まり返った教室で本でも読んで時間をつぶそ・・・


「さきーー!おっはよう!!」


「わっ!びっくりした!」


突然後ろから親友のるみにドンっと背中をたたかれた。


なんだ、良かった。どうやらホームルームまでの一時間は賑やかに過ごせるらしい。