だれよりも近くて遠い君へ

それから少ししたあたりのとき、私はいつものように、病室に行ったの。
驚いたなぁ、だって、さくがいたから。
中の話はよく聞こえなかったんだけど、そこの部分だけははっきり聞こえたんだよね。

「春を守ってほしいの。
これからずっと、隣にいてあげてほしい。お願いします。」

さくがなんて答えたのかなんて知らない。 

あんなに毎日、こっちを見てほしいって思ってたのに、ずっと上の空だったのに、
中を見なくてもわかるくらいにハキハキ話すお母さんひさしぶりだった。

お母さんはたぶん、ずっと私のこと見てくれないんだろうなあって思った。 

そのまま、私はお母さんに会うのが怖くて病院に行かなくなった。
毎日行っていたのに、全然足が向かなくなったの。

お母さんは、亡くなった。

会いに行かなかったから、最後がどんな風だったのかとかもわからなかった。

お葬式の日、火葬が終わってからさくは私に言った。

「俺がお前を守るから、、」

すぐにわかったよ。 
あぁ、お母さんとのこと気にしてるんだろうなあって。
だから、ちゃんと

「いらないよ」

ってはっきり言ったの。
求めてないし、守るって何?
お母さんのお願いなんて、無視していいんだよ。

「そばにいる」

さくって頑固だから、聞いてくれなかった。
真っ直ぐな目は、今と変わらなくてなんかすごく逸らしたくなったの。