甘くない恋の協奏曲 -Track.1 ホウキボシ

「それで、そのアイドル科の部ですが…ボーカル部、ダンス部、アクロバティック部、作詞作曲部の4つがあります」
 そこまで言うと、先輩は校長の方を振り向く。
「彼女は、どの部に?」
「…ええと、ボーカル部とダンス部、作詞作曲部の3つね」
 …3つ?
「掛け持ち、ですか?」
「ええ。ほとんどの生徒が掛け持ちしているわね」
「ちなみに、僕はボーカル部とダンス部、アクロバティック部の3つです」
 ……ふぇ、先輩がアクロバットするのか…カッコいい。
「授業は、自分でいつ受けるか決められます」
「えっ」
 大学みたい。
「各部で自分のパートナーを決めるのですが…パートナーと授業を揃えてもいいんですよ」
「…なるほど」
「説明はこれくらいね。後は授業で説明を受けると思うから」
「はい、ありがとうございました」


        * * *


 【朔葉side】

「…なんでこうなったんだ…」
 僕は、低く唸ってこめかみを押さえる。
 僕の隣に──絶妙な距離を保ちながら──並んでいるのは、高槻絢音とか言う…転校生。
 授業の無い時間…HRや休み時間にだけいる教室が同じになるわ、“部”は被るわ…。
 しかも、貴重な放課後に学校内を案内しろって?
 何これ、絶対裏で何かしてるっしょ(全く合っている)。


『……渥美、忙しいのは承知なんだが…高槻に校内を案内してやってくれないか?まあ…親睦を深めるためにも』
『え…なんで僕が…マジで忙しいのに』
『いいじゃん、作部でパートナーになるんでしょ?』


 ───パートナーとか、本当にさせられそう。
 今は、新入生が入ってきていないから…個人で授業を受けている。
 あと1週間くらいで新入生が入って、パートナーを決める。
 そうして、一緒に授業を受けるんだ。
 ……でも、まだ話とかあの時以降してないのにねぇ…。
「……のさ、渥美」
「…へっ、ん?何」
 あー、声が…。
「学校の案内なのに、なんで無言なわけ」
「っ、あーごめん…」
 女子と話すのって、慣れないな…。