半個室の居酒屋に入った途端
「なに無視してやがる、あ?理由があるんだろうな?納得するやつが」
えー、めっちゃ怒ってんじゃん、、、
「とりあえず生2つ下さい」
聖にビビってる男性店員にサラッと伝えて改めて聖の顔を見た、
はい。怒ってますねやっぱり。
「なんでそんな怒ってんの?」
「連絡無視されて怒らねぇやついんの?」
「……(セフレには怒らんだろ!)」
「なに、なんか言いてぇことあんの?」
「もしかして、お金足りなかった?
ごめん、それなら今払うから」
「……てめぇ、ほんとになんも分かってねぇみたいだな。」
ええ、わかりませんとも。
あなたがそんなに怒り心頭な理由なんて検討もつきませんとも!!!
イライラした様子でタバコを吸い込む聖、
怖いよう、悠さん家泊めてもらえばよかった……
「メッセージ何で読んでねぇの」
言えないよねー、まさかブロックしてますなんて……
「えっとー、ちょっと忙しくて」
「ほーん、昨日も定時に帰って今日もこの時間で帰宅してるけど忙しいと?
土日もそんなに忙しいと?」
……やべ、間違えたかも
寝込んでたって言えばよかった、ってあれ?
「なんで昨日定時に帰った事知ってんの?」
「カマかけただけだよ。
まさかほんとに定時に帰ってるとはな、
いい度胸だわ。」
やらかした。これは完全に死亡フラグ……
「なんで聖はこんなに怒ってんの?」
「……は?
意味わかんねぇまま居なくなって連絡もいきなり拒否されたら怒るだろ。」
そうか、ちゃんと言わなきゃいけなかったのか。
きついなー。流石に言葉にするのはきつい。
「お待たせしましたー!生でーす!」
運ばれてきた生ビールをとりあえず乾杯し、飲む。
うまーい!やっぱり仕事終わりの生ビール最高!
「おい、聞いてのんかお前」
「聞いてるよ。
終わりにしようと思って。」
「……なにを」
「聖との関係。」
しばらく沈黙が続いた。
そういえば聖との間で沈黙って今までなかったかも。
ゆったりだけどずっと会話が何かしらあったことを今更感じた。
「そうか。わかった。
悪かったな、こんなとこまで押しかけて」
「ううん。大丈夫。」
「そうか。」
生ビールがなるなる頃聖は店員を呼び止め会計を求めた。
もうすぐほんとにもう二度と聖に会えなくなる。
もう大丈夫、忘れるって決めたのに胸が鈍く疼く。
セブンスターの香りが私を包み薄いグレーの瞳が私を見る。
「行くか」
「……うん。後でお金渡すね」
「このくらいいい。」
「わかった。ご馳走様です。」
ーーーーカラン
「ありがとうございましたー!」
店員さんの元気な声を背に私達は店を出た。
「なぁ、なんでお前あの日の最後スクリュードライバーじゃなくバイオレット・フィズ頼んだ?」
なんで、そんなこと覚えてんのよ。
まさか、意味がばれた?いや、聖はそんなロマンチストでもないしカクテルの言葉なんて知らないはず。
「さぁ、気分よ。」
「そうか。」
「うん」
「じゃーな。」
「うん。じゃーね。」
いつもように別れを告げる。
私達は別れる時、またね。と言ったことも言われたことも無いことに今気付いた。
そんなもんか、この関係なんて。
呆気なくまやかしの関係は終わってしまった。
