好き嫌いは、許しません!〜竜王様、ご飯の時間です!〜

「なんでこんなことろに!」

 ガバッと顔を上げると、やっぱり。目の前に、竜王様。

 行商人の着るフード付きのマントをすっぽりかぶり、私の目の前に立っていました。漆黒の髪はフードで隠れても、その力強い黒ヒスイの瞳でわかります。
「そなたが、おやつの材料を買いに出たと聞いたから」
「はい? 何かおやつに好きなもの買って欲しいんですか? 私、そんなにお金持ってませんよ?」
「そんなわけなかろう」
 即ツッコミきました。あ、いかん。また私いつもの調子で竜王様に話しかけちゃったわ。さっき反省してたところでしょうが。ちっとも反省が生かせてないじゃないの。でも、竜王様が、下っ端メイドの買い出しを追いかけてくるなんておかしいでしょ。
 私がジト目で見ていると、竜王様はスッと視線を逸らせました。
「……まあ、なんだ。その……さっきはすまなかった」
 ぼそっと、竜王様が、一言。
 謝り慣れてないのかな、バツの悪そうな感じがちょっとかわいい。……違くて。先に竜王様に謝らせてどうするの!
「いいえ私の方が、生意気なことを言いました。すみません!」
「余が、大人げなかった」
 そうですよ……って、あぶなく同意しかけたけど、ダメダメ。堪えました。
「これからはちゃんと料理長に、竜王様のお好みを聞いて勉強しておきますね」
「そうしてくれるとありがたい」

 なんとなく気まずい空気だったのが、ふと緩み、気がつけばお互いに笑い出していました。