好き嫌いは、許しません!〜竜王様、ご飯の時間です!〜

 竜王城を飛び出したからといって、行くあてなんてありません。せいぜい、以前お使いで行ったことのある市場くらい。別に買い足すものなんてないけど、フラフラと歩いて市場に着きました。

 市場の入り口がよく見えるところに腰掛けて、ぼ〜っと行き交う人たちを眺めます。

 旅の行商人のような人や、町の人。いいなぁ、ちゃんと住む場所と仕事があって。私は多分、さっきのことでクビになるでしょう。
 というか、好き嫌いするって、子供かっつーの。いい大人なんだから、出されたものは黙って食べる。感謝して食べろって。……なんて、竜王様に逆切れしてもしょうがない。そもそも私の確認不足であって、竜王様は全然悪くないんです。

 はぁ……。

 出るのはため息ばかり。
 この世界に転生してもう半年以上は経つけれど、知ってる場所は竜王城の中しかないし、知り合いだって、お城で働く使用人さんたちくらいしかいません。この状態でクビになって、はたしてこの世界で生きていけるのでしょうか。
 私にできることといったら、料理くらいだしなぁ。
 住み込みOKの料理屋さんとかあればいいけど、片付けできない、破壊魔、グータラ。ダメだ、こんな子、誰も雇わないわ。考えるまでもなかったわ。

 考えれば考えるほど暗い未来しか見えなくて、頭を抱えて落ち込んでいたら。

「やはりここにいたか」

 頭上から、素敵バリトンボイスが降ってきました。
 何度も聞いたことのあるイケボだけど。