「竜王様、その葉野菜がお嫌いなんですか?」
「…………」
 無言は肯定ですよ!
「アピウムが入っていたせいで、竜王様は楽しみにしておられたミソシルが飲めなかったんだぞ!」
「えぇ……」
 それ、喜んでいいのか反省したらいいのかわかんない。
 竜王様は、私の作るお味噌汁が楽しみ→喜ぶ点。竜王様の嫌いなお野菜を入れてしまった→反省点。
 うん、ここは喜ばずに謝った方がいいかな。
「申し訳ございませんでした。私はただ、色艶も良かったので、きっと美味しい、体に良いものだと考えて、今日の具材に選んだのです。料理長に確認すればよかったものを……本当に申し訳ございませんでした」
 私は深々と頭を下げました。
「本当に反省しているのか?」
 まだフォーンさんはお怒りっぽい。
「もうよい」
 そうでもなさそうな竜王様。やっぱりこの二人の温度差すごいな。
 とにかくお許しが出たので、肩の力が抜けました。やった。クビ回避! ……でも、力が抜けたのは肩だけじゃなかったようです。
「お毒味しましたが、とても美味しかったですよ。体にもいいと思います」
「……匂いが嫌いだ」
「ミソの匂いでかき消されてますよ」
「味も嫌いだ」
「それも、ミソの味でかなり軽減されてます。一度お召し上がりになってみてはどうですか?」
「いや、何をしてもわかるから食べぬ」
「子供ですか!」
「…………」
 また顔を背ける竜王様に、思わずツッコミ入れてしまったら。
「ライラック!!」
 フォーンさんの焦った声で、ハッと我に返りました。

 竜王様、めちゃくちゃ偉い人だっつの。ただの上司じゃないっつの!

 竜王様も別に私に怒ることなく乗ってきてたから、遠慮なく普通に話してたけど……あばばばば。
「失礼いたしましたっ!!」
 私はくるっと踵を返すと、脱兎の如くダイニングを飛び出したのでした。