プンスカお怒りのフォーンさんからはなんの説明もなく、連れてこられました、竜王様のお食事場所(ダイニング)

 ちょっとくらい説明してくれてもよくないですか? そしたらこっちも怒られる心算できるってもんなのに。でもここまできたら仕方ない。覚悟を決めて怒られますか。
「失礼します」
 フォーンさんの後ろについて、顔を伏せてしずしずと入りました。竜王様の前では、許しが出るまで顔を伏せるのがお約束です。
「なんだ、フォーン。ライラを連れてきたのか」
 部屋の奥から、竜王様の素敵バリトンボイスが聞こえました。
「はい! これは直接この者に謝罪をさせ、罰を与えるのがよろしいかと思いまして」
 フォーンさんの話から察するに、どうやら私、知らないうちに竜王様の逆鱗に触れてたようです。って、いや、全く身に覚えないんだけど。
 ということは私、このままクビかもしれない。
 ここにきて一度もそんな場面に遭遇したことないけど、ミスをしたら即クビ! 二度目はなし。一回目でも容赦無くクビって聞いてるし。とは言いつつも、私を拾ってこのお城に住まわせてくれた優しい竜王様のイメージとは全然違うので、怖いお方と聞いても違和感しかないんだけど。
 しかしどうやら、そこまで大事ではなかったようです。
「いや。余はそこまで気分を害してはおらぬが」
「いいえ、ここは断固罰を与えるべきでございます」
 ん? 二人の温度差、すごくない?
 お怒り(?)なのはフォーンさんで、竜王様はそこまで気にしていないように聞こえるんだけど。
「……。ライラ、面を上げよ」
「はい」
 許しが出たので顔を上げれば、竜王様の麗しいお顔が見えました。
 いつ見ても超絶イケメンです。
 憂鬱そうに頬杖をつき、その黒ヒスイのような瞳でこちらを見ています。
「ええと、私、なぜこちらに呼ばれたのかわからないのですが……」
「お前が竜王様の嫌いなアピウムの葉を、スープに入れたのだろうが!」
 恐る恐る竜王様に聞いたというのに、なぜかフォーンさんが答えてくれました。
 アピウム? ああ、きっとセロリもどきのことね。ということは竜王様、セロリもどきが嫌いなの?