「これはハムレットの一節で、
ハムレットがオフィーリアにあげた手紙に書いてあった事だよ。」

彼はそう言うと腕に入れたタトゥーを見せてくれた。

「Doubt thou the stars are fire;
 Doubt that the sun doth move;
 Doubt truth to be a lair;
 But never doubt I love.
古い英語も混ざっているから少し読みにくいかもしれないけど、そう書いてある。」

「ふうん。」と素っ気ない返事。返した私に彼はまた続けた。

「星の燃ゆるを疑おうとも、
 太陽の動くを疑おうとも、
 真実の誠なるを疑おうとも、
 我が愛を疑うことなかれ。
僕の愛を疑うことなかれだよ。君へのメッセージだ。」

この時代に、本当にそんな事が言える人がいるんだ
と思った。
こそばゆく、聞く人によっては気持ち悪さも覚えるだろうこの言葉は、
(私にとってもそうだったが)
不思議と嫌な気持ちはしなかった。
相変わらず素っ気ない返事しかしない私に彼はどこか誇らしげだった。

グーッと私のお腹がなった。
彼は「何か食べようか」と言って台所に向かい、15分かそこらでパスタを作って持ってきた。
「僕の料理の十八番、クリームパスタ。
美味しいからクリームの部分が固まる前に食べな。」
ニコッと笑いかけて、彼は食べ始めた。
私もそれに続いた。
2人とも何も喋らず、
咀嚼音だけが私達の会話だった。