日曜日。

コンコンと音がした。
病室のドアが開く。
私は、表情をつくる。

「もう、大丈夫なのか…?」

君がお見舞いに来てくれるなんて嬉しい。
でも、今はそんな振る舞いはダメ。

「…ごめんなさい。私のせいで。ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんなさい…!」

「落ち着けって。おまえは、悪くねぇよ。なんつーか、事故、みたいなもんだろ…」

ぐすん。
うん、いい感じかな。

「それで?なんで死のうとしてたんだよ」

「それは。私、最近いいことなくて。もう、限界だったんだ」

君が、私を見てくれないから。

「だからもう、終わりにしようって。そう、思って」

私は君のことがこんなに好きなのに。
君には私がいるでしょう?
なのに、君が見てるのはいつだって…

私たちの未来に、あの子は必要ない。

「そしたら、彼女が私の腕を掴んでて。私、びっくりして。彼女言ってくれたんだ。『だめ!』って。それが、すごく嬉しくて、なのに。なのに…」

だって、彼女いい子だもの。
正義感があの子を動かしたんだろうね。
腕を掴んでくれた時は、本当に嬉しかったよ。
それは嘘じゃない。
だってそうでしょ?

私たちのために死んでくれるんだから。

「ごめんなさい…本当に、ごめんなさい」

さすがに突き落とそうとした時は驚いてたけどね。
でも、そんなのほんの一瞬。
あの子は落ちて、私は生きている。
しょうがないよね?
だって、君は私のもの。
取ろうとしたから、駄目って教えてあげただけ。
自分の命と引き換えに自殺をとめた。
かっこいいじゃん。あの子にお似合いだよ。悲劇のヒロイン、みたいな?

「もう…私なんて、生きてない方がっ…」

「…そんなことない」

優しい君の体温を感じた。
君の腕の中で、私は。



微笑まずにはいられなかった。

                  [終]