氷の美女と冷血王子

私のイヤな予感はよく当たる。
望んでもいないのに、トラブルは向こうからやってくる。


バタンッ。

何の予告もなく開けられたドア。

「え、専務」

まず感じたのは随分早い時間だなっていうこと。
下手したら昼前までかかると思っていたのに、専務が戻ってきたのは10時過ぎだった。

それに・・・険しい顔。
何かあったのは一目瞭然。

「コーヒーを入れてくれ」
「はい」


コトン。
デスクにコーヒーを置く。
それまで、窓の外を見ていた専務が椅子ごとこちらを向いた。

うわぁ、ひどく疲れた顔。

「大丈夫ですか?」
つい、言葉が出た。

「ああ」
ぶっきらぼうに返事をして、コーヒーを口に運ぶ専務。

とても大丈夫には見えない。
きっと何かあったんだ。
分かっていても、これ以上は突っ込めない。
そう思ってしまうほど、専務が弱って見えた。

「はぁ、俺も人の事は言えないな」
「えっ?」

「君に仕事はきちんとしろなんて言いながら、俺自身が仕事にならないなんて・・・情けない」
「専務・・・」
いつも強気な専務の意外な姿に驚いた。

この人にもこんな顔があったのね。
完全無欠の王子様だと思っていたのに。
かわいいなって思う反面、どれだけ虚勢を張って生きてきたんだろうと、かわいそうにも思える。

「トラブルですか?」
専務がこれだけ動揺するからには、よほどの事だろう。