氷の美女と冷血王子

「随分機嫌が悪いな」

徹は、『原因は何だ?』と言いたそう。
いくら愛想のない専務でも、朝からここまで機嫌が悪いのは理由があるはずだと思ったんだろう。
鋭い人だから、何か気づいたのかもしれない。

「私がボーッとしていたから、怒らせちゃったんです」
嘘ではない言い訳をしてみる。

「へー、珍しいな」
「そうですか?」

一体徹には、私ってどんな人間に映っているんだろう。
まだ学生だった頃の私を知っているからには、いいイメージはないと思う。
あの頃の私は、自分とは関係のない噂に翻弄されていたから。
暗黒の十代。
まさにそんな感じ。
私にとって十代は消したい過去でしかない。


「・・・オイッ」

え?
「ああ、すみません」

ヤダ、またやった。
つい妄想に浸ってしまった。

「具合が悪ければ、帰ってもいいんだぞ」

やっぱり友達だ。徹と専務が同じことを言っている。

「大丈夫です。すみません」

ここは素直に謝るしかない。
そして、気合いを入れて仕事に集中しよう。

「それならいいが。専務の手綱をとれるのは君しかいないんだから、頼むよ」
「・・・はい」

とても手綱なんて取れている気がしないけれど、精一杯頑張りますという意味で返事をした。

そのまま、徹は会議へと向かって行った。

今日の会議は定例の重役会議。
社長も出席するし、長くなることも多い。
荒れなければいいけれど・・・