氷の美女と冷血王子

もう、迷いもためらいもなかった。

俺は振り返り、ベットに横たわる彼女に顔を寄せる。

近くで見れば見るほど、整った綺麗な顔だ。
そっと触れた唇も柔らかく、吸い付いてくるような感覚。

チュッ。
重なった唇が小さな音をたてて一旦離れた。

「キスも初めて?」

「えっ、そんなこと・・・聞かないでください」
恥ずかしそうに、俺から目を離そうとする。

しかし、俺は頬に手を当てて視線を戻した。

「逃げるんじゃない」

その言葉に、彼女の表情が変わった。

俺だって、自分の秘書に手を出そうって言うからにはそれなりの覚悟がいる。
ましてや、彼女は超がつくくらいの美人で、初めて。
いい加減な気持ちでは向かえない。

「本当に良いのか?」
「はい」
「途中でやめてって言っても、止められないかもしれないぞ」
「大丈夫です」
声から真剣さが伝わってきた。

「後悔しないんだな?」
「はい」
「わかった」
俺も覚悟を決めた。


再び重なる唇。
深くなっていく口づけと共に、お互いの感情も流れ込んでくる。
俺は遠慮なく、彼女を抱いた。
初めてで不安だっただろうに、彼女も情熱的に応えてくれた。
きっと俺たちは相性の良い男女なんだろうと思えるほど、心地の良い時間だった。
ただ2人が一つになる瞬間、
「うぅぅー」
うめくような声が彼女の口から漏れ、一筋の涙が流れた。
俺はそのことに気づかないふりをした。
そのことを気遣う素振りを見せれば、彼女が余計に傷つく気がした。


「おやすみ、優しくなくてごめん」

何度目かの行為の後、疲れ果てて気を失うように眠った彼女。
シングルベットの片隅で小さくなって眠る彼女の頬に、俺はそっと口づけをした。