氷の美女と冷血王子

「私、専務の事が好きかもしれません」
「はああ?」
思わず後ろを振り返りそうになった。

だって、うちの会社に来てもらうのも随分強引だったし、仕事中だって横柄な態度をとっていた自覚があるのに。どこに好きになる要素があるって言うんだ。

「私、専務もご存じのように会社勤めはすぐに辞めてしまったので、ちゃんと仕事をしたことがなかったんです。もちろん花屋の仕事も、母さんの店の手伝いも仕事には変わりありませんが、ちゃんと企業に入ってみんなで一つの仕事を進める楽しさは別格でした」
「ふーん」

そんなものかなあ。
俺にとっては当たり前すぎてよくわからないが。

「専務のことだって、最初は俺様でわがままで最悪だって思っていたんです」
「悪かったなあ」
よく思われていないのは分かっていても、こう真っ正面から言われると傷つく。

「でも、一緒に仕事をしているうちに変わりました」
「え?」

「どんな時にも誠実に仕事と向き合う専務を見ていて、この人のために仕事をしたいと思うようになったんです」

へー。

「でもそれは仕事の上だろ?それが俺を好きだってことになるのか?」

「わかりません。私は誰とも付き合ったことがないので」

ああ、そうか。
今まで彼女は自分の気持ちに蓋をして生きてきたんだ。

「ただ、専務のために何かしたいと思ったんです」
「うん」

俺も、そう思った。
だから、今夜連れ出した。

「これ以上専務が困ったところを見たくはありません」
「ああ」

俺も、君が傷つく姿を見たくはない。
そのためなら、大抵のことはできる気がする。

「今日みたいな日には、専務の側にいたかった」
「・・・」

俺も、今側にいたいのは誰でもなく君だ。