氷の美女と冷血王子

「これでいいか?」

「ええ、ありがとうございます」
はっきりと話す声は、いつもの彼女。

「お前、酔ってなかったのか?」
つい問いただすような言い方になった。

「ええ。気持ちよくはなっていましたが、酔ってはいません」
「じゃあ、」
俺をだましたのかと聞きたくて、口にする勇気がなかった。

「すみません。ただ、もう少し専務と話したくて」

そう言われると、大抵の男はこの先の展開を期待するだろう。
それが彼女のような美人ならなおさらだ。

まあいい、話があると言うんなら聞いてやろう。
俺だっておとなしく家に帰りたい気分ではない。
しかし、

「いつもこんなことをするのか?」
やっぱりそこは気になる。

「いいえ、しません」
ブルブルと頭を振る音が聞こえてきた。

「じゃあどうして?」

俺をからかっているのか?
それとも、何か魂胆でもあるのか?

「その前に、一つ教えてください」
少しだけ彼女の声が大きくなった。

「何だ?」

「専務はどうして、私を秘書に誘ってくださったんですか?」

「それは・・・」
正直、言葉にできるような明確な答えはない。

「私の外見を気に入ったからですよね?」
尋ねると言うよりも、確認するような口調。

「そうかもしれない」
あえて否定はしない。

それも彼女を秘書にと望んだ一因ではある。

「やっぱりそうですか」
どこか寂しそうに、呟く声。

「で、こんなことをする理由は?」
今度は俺が聞く番だ。