氷の美女と冷血王子

「どうかしましたか?」
俺の歩が少し遅くなったのを感じて、彼女が首をかしげる。

「いや、どうもしない」
どうもしないんだが・・・

「見て、すっごい美人」
「本当ね、うらやましい」
今度は若い女性同士の会話が聞こえてきた。

今まで、周囲の声がこんなに気になることなんてなかった。
しかし、今日に限ってはとてもよく耳に届く。

「私はどこかその辺の居酒屋でもいいのですが・・・」
彼女もやはり、周りの目が気になるらしい。

「いいよ、せっかくだから美味しいものを食べよう。その角を曲がれば店だから、もう少しだ」
「はい」

彼女はいつもこんな視線にさらされてきたんだな。
そして彼女の隣に立つってことは、こんなにも人に見られるんだな。
そう思うと、つい自分の姿を見返してしまう自分がいる。

俺だって、見た目が悪いわけではない。
身長も180センチ越。
週に2度はジムに通い体も鍛えている。
身につける物だって、人一倍気を使っているつもりだ。
パッと見、金持ちセレブに見えることだろう。
でも、彼女の外見は規格外だ。
行き交う人が振り返ってしまうほど目を引いている。


「すみません」
なぜか彼女が謝ってきた。

頭の良い彼女のことだから、俺の気持ちに気づいたんだろう。

「君のせいじゃない」
どちらかというと、俺の問題かもしれない。

俺は劣等感に嘖まれていた。